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"全てが虚構、ルパンなんて存在しなかったという話なんです  一つ思ったのはルパンというのは何者なのかということですね。これを物語とは別の柱として、つまり横軸に設定してみようと思った。ルパンって果たして何..."

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全てが虚構、ルパンなんて存在しなかったという話なんです

 一つ思ったのはルパンというのは何者なのかということですね。これを物語とは別の柱として、つまり横軸に設定してみようと思った。ルパンって果たして何者だったのかということをルパン自身に問わせてみたい。実を言うとこの部分が実現できなかった一番の理由だったのかもしれたい。
 もう一つはやっぱりルパンが何を盗むのかということで、宝石や現金だとか物質的な対象でないものを考えた。あくまで動機なんですけど、化石なんです、それも天使の化石。現実と非現実の狭問にあるようなもの。大戦中にアフリカで発掘されてナチスドイツの手に渡って、そしてイスラエルに渡り、なぜか日本に持ち込まれている。これを縦の話にしようと思った。
 最終的にそれはフェイクで、イカサマなんですよ。そもそも言葉で思いついた発想が「虚構を盗ませる」ということなんです。最終的に捜し当てたものは天使の化石じゃなくて、ただのプルトニウムだったと。しかもルパンがそれに触れることで東京が吹っ飛ぶという話なんです。もちろんそれも含めて全部フェイクなんですけど。実際には作動しない原爆で、全部がフェイク。だからルパンだけが現実であり得るわけがない。ルパンもフェイクであると。最終的にルパンなんてどこにもいなかったという話にしようと思ってたんです。
 じゃルパンだと思ってたのは誰なんだということになるんだけど、一つあったのは、原作でもそうだけど、あの連中はみんな変装の達人なんですよ。最初ルパンだと思ってたのが次元だったり、銭形と見えたのがルパンだったり。キャラクターが確定しないような構成にしたらどうかなと考えたんですよ。全て事件が終わった段階で次元と五エ門が撤退するわけです。その時ルパンはいなくなっていて、ルパンはどこへ行ったんだ、という話を目論んだんです。
 全部が虚構で全部がどんでん返しで、確かなものなんか何もないという話。世の中に唯一確かなものがあるとすれぱ、それは当時で言えぽ「核」だった。それを活劇の枠の中に入れようという、当時の僕としては最大限の企画だったんですよ。ある意味では非常に調子に乗ってたわけで、行けるところまで行くぞという気分だったんです。
 もしかしたらルパンは最初からいなかったんじゃないか、ということの結論が得られれぱ、最終的にルパンにとどめを刺せると思ったんです。宮さんが僕に期待した役割はまず間違いなくそうだったはずなんです。言葉としては言わなかったけど、今さら古臭いオヤジたちにルパンをいじらせたくない、自分はやりそこなったけど、自分より後の世代であるあんたの手でルパンに引導を渡せ、ということだったと僕は理解してる。



- 幻の押井ルパンは「虚構を盗む」はずだった(押井ルパン資料2)

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