“さて、当時、北大に中谷宇吉郎という物理学者がいた。氷雪の研究者として有名だがエッセイストとしても知られている。この中谷教授は、北海道開発五カ年計画の最終年となる昭和32年4月に、雑誌・文藝春秋に「北海道開発に消えた八百億円 - われわれの税金をドブに捨てた事業の全貌」というショッキングなタイトルの論文を発表する。この論文の中で、人口増加・食糧増産・農家戸数の増加について詳しく統計数字を分析し、「いずれも達成率ゼロ」であった、と断定したのである。
この論文が出たおかげで、霞ヶ関の北海道開発庁は上を下への大騒動になった、と聞く(そう、この役所の長官は東京の霞ヶ関にいたのである)。そして、開発庁の高官によって、翌月の文藝春秋誌にすぐ反論が掲載される。いわく、
「開発計画は順調に進展している」
「なぜなら、過去の年度で、われわれは順調に予算を消化してきたからだ」--
この論争、どこが行きちがっているかお分かりだろうか? 中谷宇吉郎先生は、目標にどれだけ近づいたかを問うたのに対し、北海道開発庁の反論の方は、“過去にどれだけ頑張ってきたのか”を答えているからである。彼らが怠惰だった、何もしなかった、といえば、それは嘘だろう。とくに現場の人々は努力していたにちがいない。しかし、努力はしても、それが実を結ばなかったのである。では、このような場合、進捗はいくらなのか?
一つはっきり分かることがある。それは、予算消化率=進捗率、ではないという事である。進捗率とは、達成の度合いでなければならない。いいかえれば進捗とは、どれだけ仕事をしたか、で量ってはいけない。「あと仕事がどれだけ残っているか」で量るべきなのである。
進捗管理の目的とは何か。それは『進捗』を「誰かに報告する」ためのものだろうか。そう考えてしまうから、そして、“進捗が上がらないとサボっていると非難される(かもしれない)”と信じるから、進捗管理がねじ曲がるのである。”
- タイム・コンサルタントの日誌から : 進捗管理とは何か? (via ginzuna)
この論文が出たおかげで、霞ヶ関の北海道開発庁は上を下への大騒動になった、と聞く(そう、この役所の長官は東京の霞ヶ関にいたのである)。そして、開発庁の高官によって、翌月の文藝春秋誌にすぐ反論が掲載される。いわく、
「開発計画は順調に進展している」
「なぜなら、過去の年度で、われわれは順調に予算を消化してきたからだ」--
この論争、どこが行きちがっているかお分かりだろうか? 中谷宇吉郎先生は、目標にどれだけ近づいたかを問うたのに対し、北海道開発庁の反論の方は、“過去にどれだけ頑張ってきたのか”を答えているからである。彼らが怠惰だった、何もしなかった、といえば、それは嘘だろう。とくに現場の人々は努力していたにちがいない。しかし、努力はしても、それが実を結ばなかったのである。では、このような場合、進捗はいくらなのか?
一つはっきり分かることがある。それは、予算消化率=進捗率、ではないという事である。進捗率とは、達成の度合いでなければならない。いいかえれば進捗とは、どれだけ仕事をしたか、で量ってはいけない。「あと仕事がどれだけ残っているか」で量るべきなのである。
進捗管理の目的とは何か。それは『進捗』を「誰かに報告する」ためのものだろうか。そう考えてしまうから、そして、“進捗が上がらないとサボっていると非難される(かもしれない)”と信じるから、進捗管理がねじ曲がるのである。”
- タイム・コンサルタントの日誌から : 進捗管理とは何か? (via ginzuna)