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"アメリカの著名な映画評論家、ロジャー・エバート(上の写真)による宮崎駿監督インタビューを翻訳しました。 インタビューが行われたのは「もののけ姫」公開後、宮崎監督がカナダのトロント映画祭(1999年)に..."

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アメリカの著名な映画評論家、ロジャー・エバート(上の写真)による宮崎駿監督インタビューを翻訳しました。

インタビューが行われたのは「もののけ姫」公開後、宮崎監督がカナダのトロント映画祭(1999年)に出席された時ですので、今から13年前のものになります。

なお、ロジャー・エバートとは「アメリカで最も有名で、信頼される映画評論家」(Wikipediaより)として知られています。非常に人気のある評論家ですが、時に辛辣な映画評をすることから、映画関係者には非常に恐れられている存在でもあるとか。


ただし、宮崎監督の作品に関しては非常に高く評価していて、今回翻訳したインタビューも、かなり宮崎監督に好意的なものになっています。インタビュー自体は、ちょっと短いのが残念ですが。

なお、本日(2012年4月6日)午後9時から「紅の豚」がオンエアーされますが、以前に翻訳した「紅の豚」製作直後の海外インタビュー記事が↓こちらにあります。こちらは、かなり長めのインタビューになってます。興味のある方はどうぞ。

【翻訳記事】 (前編) 宮崎駿監督が紅の豚について海外メディアに語る

↓以下にロジャー・エバートによるインタビューを翻訳してお伝えします。


——————————————————
ほとんどのインタビューは、ジャーナリストにとっては単なる仕事に過ぎない。しかし、時として、自分が天才に会っている事に気付かされる場合もある。そんな時は静かに注意深く話を聞き、話のすべてを覚えておこうと努めるものだ。私にとっては、ベイルマン、ヒッチコック、フェリーニへのインタビューがそうであった。そして、この9月に行った宮崎駿監督へのインタビューでも、再びそうした思いを味わうことになった。

宮崎の名前は、まだよく知られていない。しかし、あなたが映画を愛する人なら、彼の映画も愛する事になるだろう。宮崎と彼のスタジオジブリにおける協力者である高畑勲(火垂るの墓)は、ほぼ間違いなく世界最高のアニメ監督と言える存在だ。「トイ・ストーリー」の監督であるジョン・ラセターはインスピレーションが湧かない時、宮崎の映画を観て行き詰まりを解消するという。

宮崎の最新作「もののけ姫」は日本の興行成績におけるすべての記録を塗り替え、最終的には「タイタニック」に王座を譲ったものの、「E.T.」の記録さえも抜き去ってしまった。

(※ もののけ姫の説明部分省略)

この作品は実写映像の代わりにアニメーションが使われてはいるが、これこそ本物の映画と呼べるものだ。作り手である宮崎監督の表現力は、私に映画ファンとして最高の瞬間をもたらしてくれた。

その宮崎監督が、いま私と同じ部屋にいる。ビジネスマンのように軽くおじぎをし、微笑みながらも、通訳を通したインタビューになることについて、ゼスチャーでお詫びをしてくれた。

彼は仕事中毒の監督として知られている。作品に使われる何万枚もの絵を、全て自らの目でチェックしているほどだ。私は宮崎監督をベルイマンのような厳格な人物か、ヒッチコックのような気難しい人物だろうと事前に予測していた。だが、私の眼の前にいる彼は上機嫌で、トロント映画祭を大いに楽しんでいるようだった。

★ インタビュー開始


Q:私は「もののけ姫」は最優秀作品賞にノミネートされるべきだと思っています。


宮崎: (少しお辞儀して)ありがとうございます。

Q:あなたが、実写ではなくアニメーションを作ることを選んだのはなぜですか?

宮崎: あるアニメーションの大作に心を奪われてしまったからですね。

Q:それは子供の頃ですか?

宮崎: 僕が10歳の時と23歳の時でした。

Q:その作品のタイトルを覚えていますか?

宮崎: 「白蛇伝」です。日本初の長編アニメ映画でした(訳注:宮崎監督自身の文章によると、白蛇伝を観たのは高校生の時)。そして、僕が23歳の時に観たのは「雪の女王」というソビエトの映画でした。僕はディズニーの映画も大好きだったんですが、ディズニー映画を観て、アニメーションを生涯の仕事にしようという気にはならなかったんです。そうした影響までは受けなかったんですね。

 技術的なことで言えば、「白蛇伝」は大したことありませんでした。ディズニー作品よりも明らかに下だったんです。僕が共感したのは、スクリーンに描かれたキャラクターの真情です。だからこそ、僕はアニメーションに心を奪われてしまったんでしょうね。

Q:アメリカでは、アニメーションはファミリー向けの映画です。しかし、日本では実写映画と同等の扱いだと聞いています。これは本当でしょうか?

宮崎: 実際には、大人が鑑賞するに値するアニメばかりと思われているわけではないですね。残念なことですが、あらゆるアニメ映画の中で、心からおすすめできるものは非常に少ないんです。女性を性的な目的で利用するような露骨な表現の作品も多いですし、生々しい暴力表現、それ自体を目的にしたものもあります。もちろん、TVアニメシリーズもあるのですが、予算が少なすぎて、自由にやれる余地はありません。

Q:宮崎さんは「もののけ姫」で約80,000枚もの絵をご自身で描かれたそうですが…。

宮崎: 自分自身で何枚の絵を描いたのか、数えたことはないですね。ただ、アニメーターが描いた全ての絵をチェックしたり描き直したり修正したりといった作業には、相当深く関わっていました。それで、そんな伝説めいた話が出てきたのかもしれないですね。

Q:どのような計画で映画作りを始められたのでしょうか?

宮崎: とにかく最初の一歩を踏み出そう、これから長い長い道のりが待ち構えているんだという事は意識せず、落ち着いて最初の一歩を踏み出そうと考えていましたね。

Q:「もののけ姫」にはものすごい怪物が登場しますね。無数の蛇のようなもので覆われたイノシシの怪物です。私がかつて観た映画の中でも最高に驚かされた映像の一つでした。あれは実写映画の特殊効果では表現不能なものですね。実写では、ただゴチャゴチャになってしまうだけでしょう。アニメーションだからこそ、鮮やかに表現できたものだと思います。


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宮崎: それは全くおっしゃる通りですね。あのシーンはコンピュータにもやらせてみようとしたんですけど、まるでうまく行かなかったんですよ。それで、僕らみんなの手で協力し合って、あの怪物を作り上げたわけです。

Q:もし実写映画であのモンスターを作ろうとすると、あの蛇のようなものはハッキリしませんよね。モンスターも引き立たなくなってしまうでしょう。アニメーションの表現力は、むしろ現実そのものを上回るくらいだと感じました。

宮崎: まさに、そうあってほしいと思って頑張りましたね。
僕はすぐ感情的になる人間なんです。僕はカッとなったり怒り狂ったりしたときに、毛穴から黒い虫が這い出てくるような気がするんですよ。スタッフたちは僕より穏やかですから、自分でどうにもできない程の怒りにとらわれる様をイメージするのは難しかったようですが。

Q:ということは、イノシシの怪物は作者自身、つまりあなたが元になったものだということですか?

宮崎: たぶん、そうなるでしょうね。怒りや激しい攻撃性というものは、僕ら人間の本質的な部分だろうと思っています。怒りの衝動を無くしてしまうことは明らかに無理ですから。ですので、怒りをどうやって抑えるかが、僕らが向きあうべき問題なんです。

この映画は子供たちも観るだろうという事は分かっていましたが、あからさまな現実の姿というものを子供たちから隠さないように、意識して作りました。

Q:だからこそ、この映画のレイティングをPG-13(13歳未満の鑑賞は保護者の厳重な注意が必要だが、入場制限はない)にすべきだとお考えになったのですね?

宮崎: 日本ではそういったレイティングのシステムを使ってないんです。大人向けの映画はありますが、ただカテゴリー分けされているだけなんですね。

僕がこの映画を作り始めた頃は、あまり幼い子供には見てほしくないと思っていました。でも、映画の完成が近づくにつれ、小さな子供たちも映画のメッセージを直感的に理解してくれるだろうと信じられるようになってきたんです。

これはプロデューサーが決めたことなんですが、日本のテレビでこの映画を宣伝したときは、あえて一番ショッキングなシーンを見せたんです。もちろん、それはマーケティングの手法という要素もあったでしょうが、何よりも子供たちの親に、これがどんな分野に踏み入った映画なのかを知っておいてほしかったんです。おかげで不快に感じたという声はありませんでした。観客には賢明な判断をしてもらえたんだと思っています。

Q:私が不満に思っていることがあります。北米の人々はディズニーの新作はほとんど機械的に観に行くのに、他のアニメーション作品はほとんど観に行ってくれません。最近で言えば「アイアン・ジャイアント」(ワーナー・ブラザーズ)もあまりうまくいきませんでした。たとえディズニーのロゴがついてなかったとしても「もののけ姫」は観るべき映画なんだ、という事を広めるために、なにかやってらっしゃいますか?

宮崎: (微笑みながら)あなたはここで僕と会ってるじゃありませんか。僕がここにいるのは、まさにそのためなんですよ。

Q:北米のどのビデオショップにも、何百本もの作品を並べた日本アニメのコーナーがあります。ただ、それらの作品が劇場で公開されることは稀です。では、いったい誰がそれらの作品を観ているのでしょうか? 実際には何百万人も隠れたファンがいることは間違いないんです。小さな町のショップにすら日本のアニメは置いていますからね。メディアはプッシュしていないのに、自分自身で日本のアニメを発見した人たちがたくさんいるんですよ。

宮崎: そうした状況は日本でもあまり変わりません。アニメが劇場公開されても、そうたくさんの人が観に行くわけではないんです。たとえ同じ作品のビデオ版は非常に高い売り上げを記録したとしてもね。

Q:しかし、「もののけ姫」は「タイタニック」公開までは日本最大のヒット作品だったではないですか。

宮崎: 正直に言いますと、それについては僕も首をかしげているんです。なぜこうなったのか、僕には分かりません。僕らがスタジオジブリで作った映画は「トトロ」までの間、劇場公開だけでは制作費を回収できた試しがなかったんですよ。黒字になったのはビデオなどの売り上げによるものでしたから。

劇場公開だけで黒字になったのは、まだ「魔女の宅急便」以降の事に過ぎないんです。ですから、僕が映画を作り始めた頃は、アニメのために劇場まで足を運んでくれるお客さんが大勢いたわけではありませんでしたね。

Q:あなたが観客層を開拓していったんでしょうね。

宮崎: そういう訳でもありませんよ。むしろジブリでは、我々にこういう作品を作ってほしいというお客さんの期待を次の映画で裏切るという事を意識的にやってきたんです。

Q:あなたは強い感情を表現したい時、口や目を大きく描くことがありますね。ディズニーの新作「ターザン」でも、赤ん坊のターザンはまさに宮崎さんのキャラクターそのものでした。まるで、あなたの作品を研究したかのようでしたね。

宮崎: (静かに笑いながら)実際のところ、僕らの作品も他の人の作品から相当な影響を受けていますよ。それは絵画からも音楽からも映画からも文学からでも同じ事ですね。

僕らの創作というものは個々に独立したものではなくて、一生をかけたバトンリレーのようなものだと思っています。受け継いだものを何かに作り変え、それは僕らの体や人生を通り抜けていき、次の世代に引き継がれていくんです。

Q:「もののけ姫」は日本の神話に基づいたものなのでしょうか?

宮崎: あまりにたくさんの神話や物語を吸収してきましたから、今となっては、もう自分の体の一部みたいになってしまいました。ですから、何がオリジナルなのか、何が神話なのか、何が歴史なのか、何が自分の思いついたことなのか、わかりづらくなってしまっているんです。

ただ、「もののけ姫」の中に含まれている要素は、僕の世代の日本人が直感的に理解できる常識的なものだと思ってます。

あの時代に森で働く日本人がいて、鉄を作る火のために木を伐採していた事については歴史的事実ですね。幸運なことに日本は雨に恵まれていますから、森を失うことなく木を切り続けてこれきましたし、森に関する神話も失われずに済んだんですよ。

Q:宮崎さんが、これ以上映画を作ることはないだろうと言ってる人がいます。もちろん、私はそんな事はないと思ってますが。

宮崎: 僕は毎回、これが最後の作品になると思いながらも映画を作り続けてきました。ただ、さすがに58歳(インタビュー時、1999年の年齢)になりましたし、「もののけ姫」の時のようにキツい仕事をこなせる余裕がなくなりましたね。キツい仕事をしなくても監督をやっていいんだと、スタッフが認めてくれるのであれば、作りたい映画はたくさんあるんですが。

Q:スタッフたちもあなたを愛しているはずですから、あなたと一緒に仕事をしたがっているでしょう。

宮崎: 僕はいつもスタジオでは暴君ですからね。

Q:最後の質問です。妻と私が日本に行った時、人間国宝の男性二人に会う機会がありました。一人は陶器を作る人で、もう一人は着物を作る人でした。あなたも人間国宝になるべきです。

宮崎: 人間国宝なんて勘弁して下さい! 僕はメチャクチャな映画を作れる可能性だけは、ずっと持ち続けていたいんですよ。

(翻訳終わり)



- 超訳コネクト | 【翻訳記事】 アメリカで最も有名な映画評論家による宮崎駿監督インタビュー (via petapeta)

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