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"今回の旅に履いていった古革の茶色いシューズ。 そろそろお役御免と、今回の旅をラストウォークにするつもりでした。 履き心地がよい靴で、勢い酷使してしまっていたのです。 カンボジア最後の日の昼。 こ..."

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今回の旅に履いていった古革の茶色いシューズ。

そろそろお役御免と、今回の旅をラストウォークにするつもりでした。
履き心地がよい靴で、勢い酷使してしまっていたのです。


カンボジア最後の日の昼。

これでこの靴も最後だなあと思いながらシェムリアップ・ダウンタウンの
バーストリートにある「ピザ・イタリアーナ」と言うお店で、
ピザが焼けるのを待っていました。

カンボジアでピザなんて、結構意外な感じですよね。


テラス席のようなところにいたのですが、
背後から子供の声が。

「サー、シューシャイン」と聞こえました。


直感で物乞いだと思い相手にしなかったのですが、
視線を感じて振り返ると、靴みがきの安っぽいブラシを手にした、
小学生位の男の子が立っています。


しばらく無視していましたが、じーっと立ち尽くす姿に根負けして、
まさかお金だけをあげる訳にもいかず、

「この靴じゃ、磨いてもしかたないんだけどな。

と思いながらもボロボロの靴を脱いで彼に渡しました。

男の子は無言で靴を私から奪い取り、
駆け出してどこかに持ちさりました。


その後、待てど暮らせど帰って来ません。
あまりに帰って来ないので、


「さては盗まれたか、でもまあ、古い靴だし。
 近くのマーケットでまた買えばいいか。

 でもそこまでは裸足?

 と言うよりあんな靴を盗む価値あるの?」


など思いを巡らせ、
さすがにこれは持ち去られたと諦めかけた時、
男の子が靴を持って帰って来ました。


その間20分。


私は少し呆れて、値段も聞かずにポケットに入れていた少額紙幣を2枚、
彼に渡しました。

サンキューとも言わないので、ちょっと渡したお金が少なかったかな?
とも思ったその時、ふと自分の足元を見ると、


そこには見違える程磨きあげられた私の茶色い靴が。


私は大袈裟ではなく鳥肌が立ちました。


す、すごい。


日本でもこんなに綺麗に心を込めて靴を磨いて貰ったことは、
ここしばらくありません。

靴に温かさと優しさが溢れていました。


私は彼にお詫びの気持ちを精一杯込めて、


「グッドジョブ! サンキュー」


とお礼を言い、1ドル札を改めて渡しました。


彼は褒めて貰ったことが嬉しかったようで、

はにかみながらニコッと笑って全速力でどこかへ行ってしまいました。

彼を疑った私の心の汚れ。

こんなところで安物のブラシを手に持つ子供の技術は、

どうせたいしたことはないだろうとの決め付け。


そして、彼を泥棒ではないかと疑った気持ち。

後でガイドさんに「あの子供たちはストリートチルドレンですか?」
と聞いたのですが、意外な答えが帰ってきました。


カンボジアの小学校は、
生徒が多くて教室が足りないため学校は二部制。

午前で授業が終わる子供は、昼から親を助ける為にいろいろ工夫して
仕事をしているとのこと。

ある子供は空き缶拾い、ある子供は靴みがき。

彼の家庭は裕福ではないでしょう。

自分の親を助けたい思いだけで、
一生懸命言葉の通じない外国人にセールスし、
大人の靴を磨いてなにがしかのお金を手にして親を助けていたのです。


戻ってくるのに時間が掛かったのは、
彼が手元に黒の靴墨しか持ち合わせていなかった為、
茶色い墨を自宅まで取りに戻っていたのと、ガイドさんいわく、
彼らは磨いた後、少し太陽に当てて墨を乾かしてから戻すのだと、

説明を受けました。

靴の仕上がりをみてガイドさんも嬉しそうです。


仕事をする上で大切にするべき事は何か、
仕事は誰の為にやるのか。

彼は自分の仕事を美しい形で残し、
私に「本当に大切なこと」を教えてくれました。


おくら入り予定だったこの靴は、私とカンボジアを繋ぐ宝になりました。



- サー、シューシャイン。|あなたの夢を叶える旅行術
2008-11-04 (via tsundere, nakano)

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