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"金があるということの意味は、物が買えるという点にとどまるものではない。それは、自分が世界から影響されずに済むということでもあるのだ。いいかえれば、快楽ではなく、防御という意味における富。金のない子供時代..."

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“金があるということの意味は、物が買えるという点にとどまるものではない。それは、自分が世界から影響されずに済むということでもあるのだ。いいかえれば、快楽ではなく、防御という意味における富。金のない子供時代を送り、ゆえに世界の気まぐれに翻弄されつづけてきた父にとって、富という概念は逃避という概念と同義になっていた。危害からの逃避、苦しみからの逃避、犠牲者の立場からの逃避。父は幸福を買おうとしていたのではない。不幸の不在を買おうとしていたのだ。金こそその万能薬だった。人間としての父のもっとも深い欲望、もっとも言いあらわしがたい欲求の具現物だった。父は金を使うことを欲しなかった。金をもつこと、金がそこにあるのを味わうことを欲した。つまりは不老不死の霊薬としてではなく、解毒剤としての金。ジャングルに出かけるときにポケットに忍ばせておく小さな薬壜(くすりびん)――毒蛇に嚙まれたときの用心。”

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ポール・オースター『孤独の発明』(柴田元幸 訳) - つれづれ (via ginzuna)

■ すごく理解できる感覚。

(via arcadia-art-t)

ものすごい陳述の上手さ。金で幸せは買えないが不幸にならない部位のほとんどは買えるっていう話はよく耳にするが、この陳述とその一般論の間にあるものの通りに登場人物を動かせばそれで良質の文芸が成り立ち、神も暇しないだろう。 (via toukubo)

なちい

(via toukubo)

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